第20章 橘海斗、ありがとう

橘海斗は、まるで馬鹿を見るような目で彼女を見つめた。

「家がなくとも、住む場所くらいはあるだろう?」

朝霧和音はそれでも首を横に振る。自分でも可笑しくなってきた。

かつての朝霧家のお嬢様が、今や寝泊まりする場所すらない身に成り果てるとは。

彼女は橘海斗が同情してくれるなど期待していなかった。ただ、自分を追い詰めないでほしいと願うだけだ。

「三年前、桐生瑛は私を相手にもしませんでした。今のこの姿では、彼はなおさら見向きもしないでしょう。それどころか、桜庭さんの件で私を心底憎んでいるはずです」

「橘様、ご安心ください。本当に、もう彼に付きまとうような真似はしませんから。どうか、私に生き...

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