第267章

怒号が、爆発するように車内に響き渡った。

鼓膜をつんざくほどの大音量。

篠崎アエミは焦点の合わない瞳をぱちくりと瞬かせ、びくんと身体を震わせる。ゆっくり顔を上げた瞬間、息を呑んだ。

榎田神也が、全身から氷のような殺気を噴き上げていた。

燃え上がるような双眸。冷酷な表情。今にも人を殺しかねない視線。

まるで地獄から這い出てきた修羅――そうとしか言いようがないほどの凄まじさだった。

ようやく意識が戻りかけた篠崎アエミは、しかしその姿を見た途端、溺れる者が救命具を見つけたかのように縋りつく。震える腕を持ち上げると、

「助けて……?」

艶を孕んだ声が、甘く震えながら漏れた。

耳に絡...

ログインして続きを読む