第38章

藤原羽里の方は、葉田知世が起き上がった時にすでに隣の動きに気づいていた。ただ目を閉じたまま動かず、彼女が出て行くのを見送っていた。

藤原羽里は食に関して厳しい舌を持ち、幼い頃から星付きシェフの手による料理しか口にしてこなかった。彼の基準で言えば、昨日葉田知世が作った水餃子は平凡な部類でしかなかった。

だが彼は、彼女に世話されるこの感覚があまりにも気に入っていた。この気難しい女性が自分のために台所に立ち、料理を作る姿を思い浮かべるだけで、胸が温かくなった。

彼はこっそり決心さえしていた。今回葉田知世が何か失敗してまずい料理を作ってしまったとしても、喜んで全部食べ切ってやろうと。

ところ...

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