第41章

加藤英太と田村健はどちらも、彼女が今回は自殺を思いとどまるために極めて強い自制力を発揮したと言っていた。彼女は刃を深く入れていたものの、動脈を避けるよう細心の注意を払っていたのだ。

もし彼女に心配事があり、生きなければならない理由があるとすれば、それは間違いなく弟の葉田晨だろう。

葉田晨の心臓移植のためのドナーが見つかり、移植チームはいつでも手術を行える準備が整っていた。葉田知世はうつ病が爆発したあの日、刃物を手にしながらも、必死に自分に言い聞かせていたのだ、絶対に生き続けなければならないと。

あの矛盾、苦痛、死にたいのに死ねない葛藤の感情を……藤原羽里は考えながら、思わず冷たい息を吸...

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