第45章

橘直人は少し寂しそうに立ち去り、葉田知世が残された。彼女は行ったり止まったりを繰り返し、一時間以上もかけてようやく別荘の門に辿り着いた。

最後の十分ほどは素足で歩いていた。白く柔らかな足の裏は何かに刺されたらしく、小さな傷ができていた。

それが葉田知世にひとつの思いつきを与えた。

彼女は藤原羽里がなぜ怒っているのかわからなかったが、ただ歩いて帰るだけでは彼の怒りを鎮められないだろうと感じていた。彼が彼女の足に痛みを望むなら、それに応えればいい。

そこで、彼女は歯を食いしばり、目を閉じて玄関先の花壇の横にある尖った石を思い切り踏みつけた。

葉田知世は痛みに息を飲み、血が流れ出した。

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