第49章

以前、葉田知世は平原遥子や他の友達から橘直人が彼女に好意を持っていると聞いていた。そのために彼が多くの努力をしてきたことも知っていた。

彼は修士課程の途中で、コネを使って葉田知世と同じ指導教授のもとに移り、海外では特に彼女に気を配っていた。足りないのはただ「好きだ」という口に出せなかった言葉だけだった。

しかし葉田知世は橘直人に対して友人や兄のような存在以上の思いを持ったことはなかった。

「やめてください、先輩」葉田知世は頭を下げ、彼の熱い眼差しを見ることができなかった。

「知世、私が君を好きだって知ってるよね?」酔った橘直人はもう何も恐れることはなかった。「君は藤原羽里を愛してない...

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