第54章

平原青会社。

平原遥子は応接室に座り、夜の十一時まで待ち、コーヒーを三杯目まで飲んだところで、ようやく平原青が手元の仕事を片付けてやってきた。

「何の話か電話で言えないことがあって、わざわざ夜遅くに来たのか」

平原青は平原遥子の頭をくしゃりと撫でると、彼女の向かい側に座った。平原青は平原家の将来の当主であり、兄弟姉妹の中で最も忙しい。従兄妹とはいえ、彼と平原遥子は何ヶ月も会わないのは珍しくなかった。

「お兄さん、葉田知世と藤原羽里のことで話があって来たの」

平原遥子も単刀直入に切り出した。前回、彼女が葉田知世のために出したマーケティング原稿は、自分の兄に遮られたのだ。それで初めて平...

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