第12話

生まれてこの方、ベンジャミンがこれほど焦燥と不安に駆られたことはなかった。帰国してから随分経つというのに、未だマルティナの姿を捉えられずにいるのだ。

彼女に会いたいという想いだけは確かなものだった。

唯一の手掛かりは、マルティナがロドリゲス家の令嬢と親しいという事実のみ。もし彼女を見つけ出せなければ、ロドリゲス家に探りを入れることが突破口となるだろう。

一方、サイモンは息も詰まるほどの緊張感に包まれながら、調査に向かうことを承諾した。

結局のところ、これは彼の失態ではない。彼に翼が生えていて、四六時中マルティナを空から追跡できるわけでもないのだから。

その時、アダムから電話が入った。彼は...