第131話

食事の最中、ピエールにとって信じられない光景が繰り広げられた。

本来なら周囲にかしずかれ、すべての膳立てを整えてもらうはずのベンジャミンが、あろうことか隣に座る女性のために、甲斐甲斐しく世話を焼いていたのだ。

マルティナは海老や蟹が好きだったが、殻をむくのはあまり得意ではなかった。それに加え、今日の席では完全にリラックスすることができなかったのだ。好物がテーブルに並んでいても、手をつけるつもりは全くなかった。

ベンジャミンはそれに気づいたようだった。

彼は手を伸ばして蟹を一匹取り、皿の上に置いた。清潔なおしぼりで手を拭くと、ゆっくりと殻をむき始めたのである。

蟹の殻は硬く、不注意に扱...

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