第149話

だが、その女性からは死角となる場所で、ある程度距離を取った後、その青年もまた顔を両手で覆い、泣き崩れていたのだ。

二人が深く愛し合っていることは明らかだった。だというのに、一体どんな苦難が彼らをここまで追い詰めたというのだろうか。

行き交う人々の多くもまた、ため息をつき、胸を痛めていた。まさか今日この場所で、これほど悲痛な光景を目にするとは思ってもみなかっただろう。

実のところ、一対の錠前など大した意味を持たないのかもしれない。それは二人の心にある執着に過ぎず、その執着が消えてしまえば、もはや固執する必要などないのだから。

マルティナの心もまた、少なからず影響を受けていた。彼女はためら...

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