第150話

あいにくマルティナの思考はベンジャミンの手管によって完全にかき乱されており、冷静さを欠いていた。そのため、事態を正確に把握することができなかったのである。

サイモンは背後で思わず吹き出してしまった。不意にマルティナを愛らしく感じたのだ。なぜ自分がそう感じたのか、彼自身にもよくわからなかったが。

実は、彼は確信犯的に二部屋しか予約していなかった。この地域のホテルは需要が高く、事前の予約なしでは確保が困難だ。この二部屋でさえ彼の手際の良さでなんとか押さえたものであり、三部屋目を確保する余地など最初からどこにもなかったのだ。

当然の流れとして、マルティナはベンジャミンと同室になるしかない。まさ...

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