第160話

その瞬間、そんな考えを抱くなんて、レスリーはどうかしていたに違いない。だが彼の内心はどうあれ、結局マルティナとレスリーはエレナの後についてそのバーに入ることになった。

他の店に比べれば、このバーは比較的安全な場所だった。店の内外に数名の警備員が配置されており、何かトラブルがあれば即座に対応できる体制が整っていたからだ。

エレナがここで安心して楽しんでいるのも納得できる。彼女自身、すでに何杯か煽っているようだった。彼女はマルティナを人目につかない隅のテーブルへと案内した。テーブルの上には、運ばれてきたばかりの酒や飲み物が並んでいる。

「マルティナ、本当に会いたかったわ! 今日電話していつ戻...

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