第167話

あの女以外に、自分に対してこれほど極端な敵意を向ける人間がいるとは考えにくかった。

その可能性に思い至り、マルティナの気分は少し沈んだ。

彼女はベンジャミンの方をちらりと見やり、胸の内で葛藤した。自分の推測を彼に直接伝えるべきか迷ったのだ。もし口に出したところで何の効果もなく、ただベンジャミンの不興を買うだけで終わってしまったら?今の状況がさらに気まずくなるだけではないか?そうなれば、どうすればいいというのか。

確かにマルティナの懸念は人一倍強かったが、それも無理からぬことだった。彼女とベンジャミンは、他人よりもはるかに多くのことを共に経験してきたのだ。最近のベンジャミンが変わったとはい...

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