第220話

エレナは食い下がった。「だめ? とてもいい話だと思うのだけど。あなたと結婚できるなら、兄さんが断るはずないわ! あなたのような才能ある女性なら、どこへ行っても引く手あまたよ。結局のところ、得をするのは兄さんのほうなんだから」

彼女は決して適当におだてているわけではなかった。マルティナが本当に素晴らしい女性だと心から信じていたのだ。絵画の才能にせよ、その物腰、性格、あるいは容姿に至るまで、どこをとっても非の打ち所がなかった。

エレナはずっと前からこのことを考えていた。当時、マルティナはベンジャミンを深く愛していたため、エレナはその想いを胸の内にしまっていたのだ。だが今、マルティナがベンジャミ...

ログインして続きを読む