第238話

ベンジャミンはマルティナの頼みを承諾すると、表情を和らげて言った。「ああ、構わないよ」

その時、マルティナが手に持っていた携帯電話が鳴り出した。画面に目を落とすと、そこには親友の名前が表示されていた。

ベンジャミンは目立った行動も言葉も慎んだが、その瞳は雄弁に心中を物語っていた。彼は自身の立場を十分にわきまえており、器の小さい男や頼りない男だと思われたくなかったのだ。

マルティナは迷わず電話に出た。「着いた? 今から迎えに行くわ」

事前に打ち合わせていた通り、エレナは到着次第マルティナに連絡することになっていた。そうすれば一緒に入場でき、気まずい思いをしなくて済むからだ。

エレナは普...

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