第43話

ベンジャミンの長い足がベッドの端へと近づいてくる気配を、マルティナは肌で感じていた。そして突然、彼がドサリと腰を下ろした。

男性特有の力強い気配が空気を満たし、その香りがマルティナの鼻腔をくすぐる。

彼女は息を殺した。身動き一つせず、物音を立てることも恐れて。

極度の緊張か、それとも別の理由か、マルティナの額にはじっとりとした脂汗が滲み出していた。

心の声が叫び続けている。「早く出て行って!」

ベンジャミンの性格からすれば、こんな粗末な場所に自ら足を踏み入れるはずがない。それなのに、彼は今、実際にここにいて、座り込んでいるのだ。

周囲の者たちは皆、うつむいたまま息を潜めていた。ベンジャミン...

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