第45話

とはいえ、人は常に前進し続けるべきだ。いつまでも同じパターンに囚われていられるわけがない。

マルティナは、曖昧で捉えどころのない扱いを受けるだけの日々に、とうの昔に飽き飽きしていた。今こそ、変わる時なのだ。

「ブーン……」

「プーッ……」

船から絶え間なく響く音を聞きながら、マルティナは何気なく船内ホールの席を見つけて腰を下ろした。

まだ岸からそれほど離れていなかったため、彼女の位置からは波止場の景色が見えた。

ふと顔を上げた瞬間、彼女の手からコップが滑り落ち、床に転がった。波止場にベンジャミンの姿が見えたからだ。

彼はまるでギリシャ神話のアドニスのように美しく、どこに現れても常に...

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