第5話

その絵を見つめるエレナの眼差しには、羨望の色が濃くなっていった。彼女は称賛めいた口調で言った。「正直なところ、あなたがペンを握っている姿なんて見たことなかったのに、いざ描くとなると、どうしてこんなにも独特で個性的なタッチになるの?」

マルティナは心外だと言わんばかりに反論した。「誰がペンを握っていないなんて言ったのよ?」

「だって、卒業してから今まで、一枚だって絵を完成させたことなんてなかったじゃない?」エレナはすかさず言い返した。

マルティナは言葉に詰まった。

実のところ、マルティナは描いていなかったわけではない。ただ、エレナがそれを知らなかっただけだ。なぜなら、マルティナの絵は常に...

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