第62話

サイモンが部屋を後にすると、そこには二人だけが残された。

その場の空気は改善されるどころか、ますます重苦しく張り詰めていく。その圧迫感はベンジャミンからだけでなく、マルティナからも発せられていた。

病室を出たサイモンはレスリーと合流し、二人は病院のベンチに腰を下ろすと、同時に深くため息をついた。

レスリーは自分を慰めるようにコーヒーを一口すすり、口を開いた。「サイモン、なんでため息なんてついてるんだ? 一体どうした?」

サイモンは頭をかきながら答えた。「いや、ただボーナスを三ヶ月分カットされただけさ」

レスリーは豪快にサイモンの肩に腕を回して言った。「おいおい、大したことないって。俺な...

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