第76話

その男の眼光は極めて鋭く、ただ一瞥されるだけで誰もが萎縮し、些細な身動きさえ躊躇ってしまうほどだった。

降り注ぐ陽光も彼に親しみやすさを与えることはなく、むしろその冷徹さを際立たせるばかりだ。

改めて見れば、その容姿は目を奪うほどに端正で、並外れた気品を漂わせている。紛れもなく、ベンジャミンその人であった。

彼は手元の書類の束に目を通しつつ、同時にマルティナの乗る車の動きにも絶えず注意を払っていた。

サイモンでさえ、ボスに対して同情を禁じ得なかった。これほどの地位にあるボスが、一体いつ、誰に対してこれほど気を使わなければならないというのか? マルティネス嬢だけは例外だった。ボスは彼女の...

ログインして続きを読む