第15章

車の中で、柊木玲文は冷静に渕上晏仁を見つめた。「渕上晏仁、これから病院には来なくていい。私たちが離婚することは父にはまだ言わないつもりだし、彼の前で何事もないふりをするのも嫌なの」

渕上晏仁はそれを聞いて、車を始動させようとした手を数秒止め、顔を上げて彼女を見た。

「玲文、離婚のことは無理だと言ったはずだ。お前はもう何度も一線を越えてるんだぞ、教訓を与えるしかない」

「何をするつもり?」柊木玲文は不安を感じた。

その言葉が終わると同時に、車のドアが「カチッ」とロックされ、黒いカイエンは矢のように飛び出した。シートベルトをしていなかったため、柊木玲文の後頭部は勢い...

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