第33章

「纱和さん……渕上社長の人はいつ私たちの指紋を取りに来るのですか?」

「多分、午後には来ると思うけど、心配しなくていい。指紋の採取は実験の邪魔にはならないから」

「わ、わかりました……」

高槻紗和は軽く頷いた。「こちらも特に問題ないから、仕事に戻っていいわよ」

中田優は心配でたまらず、ほとんど駆け足で自分のデスクに戻った。午後に渕上迅の人が指紋を取りに来ると知り、ラベルを交換したことがバレるのではないかと心中焦りが募る。

彼女は遠山玲奈を見上げ、助けを求めるような目をしていた。

遠山玲奈は少し眉をひそめ、その後トイレに向かって立ち上がった。中田優もすぐに後を追った。

トイレに入る...

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