第4章
柊木玲文は渕上晏仁と目を合わせ、彼の目に溢れる怒りを全く気にしなかった。
「何度言っても同じよ。あなたの子供を産むなんて無理」
言い終わると同時に、渕上晏仁は凶暴に彼女にキスをした。
柊木玲文は一瞬驚いた。昨晩、彼は他の女性とキスをしていたのに、今また彼女にキスをするなんて、ただただ気持ち悪くて怒りがこみ上げてきた。彼女は必死に抵抗した。
彼女の抵抗は渕上晏仁にとっては蟻集まって木を揺るがすのようなもので、彼の腰に回した手は全く緩むことなく、むしろさらに強く締め付けた。
抵抗のせいで、彼女のバスタオルはすぐに緩んでしまい、渕上晏仁の目には情欲が燃え上がった。
柊木玲文はすぐに渕上晏仁の体の変化に気づいた。彼女は風呂上がりで、バスタオルの下には何も着ていなかった。
彼女は怒りと憤りで彼を強く噛んだ。濃厚な血の味が二人の口の中に広がった。
しかし、彼は彼女を放さず、もう一方の手はバスローブの下から入り込み、指先が彼女の細い長い脚の近くを彷徨い、まるでピアノを弾くように彼女の興奮点を無遠慮に刺激した。
柊木玲文の体は急に硬直した。「渕上晏仁、離れて！」
すぐに、彼女の全身が痺れ、愛液が溢れ出し、渕上晏仁の指を濡らした。
「玲文、君も僕を必要としているんだろう？」渕上晏仁は故意に愛液を彼女の乳首に塗り、舌で軽く噛みながら吸った。
柊木玲文は絶えず抵抗したが、全く効果がなく、心の中でますます絶望を感じた。
ついに、彼が彼女の湿った部分に粗棒を押し付けた瞬間、恥辱感が彼女を絶望させ、目を閉じた。
「渕上晏仁、私を憎ませないで」
渕上晏仁の動きが急に止まり、瞳孔が無意識に縮んだ。
彼はこんな柊木玲文を見たことがなかった。全身が絶望と苦痛に満ちていた。
この瞬間、彼は狂ったように彼女を激しく占有したいと思った。まるで彼の心には彼女しかいないことを証明するかのように。
しかし同時に、心の中で声が彼に告げていた。今彼女を手に入れたら、二人の関係は完全に終わると。
渕上晏仁の目には葛藤が浮かび、彼女をじっと見つめた。十数秒が過ぎた後、彼は突然彼女を放し、ベッドから起き上がり、急いで部屋を出て行った。
「バタン」
寝室のドアが激しく閉まる音が響き、柊木玲文は震えながら布団を抱きしめた。
その後数日間、渕上晏仁は戻ってこなかった。
柊木玲文は彼と離婚の話をしたかったが、メッセージを送っても電話をかけても返事がなかった。
週末、柊木玲文はリビングルームでパソコンを使って仕事を探し、履歴書を送っていた。突然、渕上晏仁が帰ってきた。
彼はとても憔悴しているように見えた。
柊木玲文はパソコンを閉じ、立ち上がって彼を静かに見つめた。二人の目が合った瞬間、どちらも沈黙していた。
「帰ってきたなら、離婚の話をしましょう」
渕上晏仁は眉をひそめ、「言っただろう、離婚はしない。今日は屋敷での食事会を思い出させるために帰ってきたんだ」
渕上家では月に一度家族の食事会があり、特別な事情がない限り、全員が参加しなければならない。
実際、渕上家の人々は彼女を見下しており、しばしば彼女を難しくしていた。
以前は、渕上晏仁の愛があれば他の人の態度を気にする必要はないと自分を慰めていたが、今の彼女はもう自分を欺くことはできなかった。
「行きたくないわ。あなた一人で行って」
渕上晏仁は苛立たしげに言った。
「柊木玲文、いつまでこんなことを続けるつもりだ？」
彼はこの数日間彼女を無視して、冷静に考えさせようとしたが、今も以前と同じように頑固だった。
「私は騒いでいるわけじゃない。ただ離婚したいだけ」
「また離婚か、玲文、君はもう十八歳の女の子じゃないんだ。今は二十八歳だ。もっと大人になれないのか？」
「あなたの言う大人になるっていうのは、あなたが外で浮気するのを我慢することなら、ごめんなさい、私は大人になれないわ。他の女性を探して。これは弁護士に作ってもらった離婚協議書よ。時間があるときにサインして」
彼女が差し出した書類を見て、渕上晏仁は嘲笑の表情で受け取り、ページをめくった。財産分割の部分を見て、冷笑を漏らした。
「僕の財産の半分を分けるつもりか？そんなことが可能だと思うのか？」
「なぜ不可能なの？これは私が受け取るべきものじゃない？」
渕上晏仁は軽く鼻で笑い、悠然とした態度で言った。「この家の中で、君が買ったものが何かあるか？それに、結婚してからの数年間、君の父親の医療費はずっと僕が出している。本当に計算するなら、君が僕にお金を払うべきだ。弁護士に計算させようか？」
柊木玲文は目の前のこの冷酷な人間を信じられず、以前の自分が彼を愛していたことを疑った。
彼が浮気を発見する前、彼は絶世の好青年を装っていた。まるで俳優賞を取れるほどだった。
「渕上晏仁、忘れないで。あの特許を君に渡さなければ、君は渕上氏の社長の座に座ることはできなかった。それに、結婚後、君が家庭に戻るように言ったんだ。もし研究を続けていたら、君がこの数年間にくれたお金よりも多く稼いでいたはずだ！」
渕上晏仁は全く気にせず、淡々とした表情で言った。「特許のこと、今言っても誰が信じると思う？」
「僕も君とお金の話をしたくないが、君がどうしても離婚したいなら、きちんと計算するしかない。玲文、離婚の話をしなければ、僕のお金は君が自由に使える」
「渕上晏仁、君は本当に最低だ！」
彼が離婚に応じないなら、彼女は弁護士に訴訟を起こすしかない。
彼の手を強く振り払って、柊木玲文は深く息を吸い、階段を上がろうとした。
しかし、渕上晏仁が前に立ちはだかった。
「着替えて、一緒に家族の食事会に行くんだ」
「行かないと言ったでしょ。具合が悪いって言っておいて」
言い終わると同時に、渕上晏仁は彼女の手首を掴み、低い声で言った。「玲文、僕の忍耐も限界だ。君の父親の医療費を止めるぞ」
柊木玲文は信じられない思いで渕上晏仁を見つめた。
渕上晏仁はすぐに携帯電話を取り出し、秘書に電話をかけた。「もしもし、僕の義父の来月の医療費を……」
彼が本当にそんなことをするとは思わなかった。柊木玲文は怒りで目が赤くなり、彼の携帯電話を奪い取って電話を切った。
「渕上晏仁、君は本当にひどい」
「ひどい？」
渕上晏仁は彼女を軽蔑の目で見つめ、彼女を自分の前に引き寄せて、上から見下ろして言った。「柊木玲文、今君が持っているすべては僕が与えたものだ。君こそがひどいと思わないのか？着替えろ。さもないと、君を従わせる方法は百通りある」
