第50章

レストランの個室で、柊木玲文が出てからもうすぐ30分が経とうとしていた。渕上迅の眉間には自然と皺が寄っていた。

「山本、柊木玲文に電話をかけてくれ」

隣にいた斎藤健が慌てて言った。「渕上社長、焦らないでください。西村律子が柊木さんと一緒にいるから、大丈夫ですよ」

渕上迅は唇を引き結び、何も言わなかった。明らかに機嫌が悪い。

斎藤健はすぐに酒を注ぎ、特に動揺することもなかった。どうせただの普通の社員だし、後で渕上迅が真相を知ったとしても、女性一人のために大事にすることはないだろう。

山本行成は柊木玲文の電話番号を見つけてかけたが、すぐに個室で携帯の着信音が鳴り響いた。

柊木玲文はトイ...

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