第68章

一方、清水グループ社長室。

渕上迅は書類を見ていたが、突然プライベートの携帯が鳴り出した。

電話を取ると、渕上婆さんの元気な声が聞こえてきた。

「迅君、今晩は帰って夕食を食べなさい」

渕上迅はまだ処理していない書類を一瞥し、即座に断った。

「無理だ」

「今晩はどうしても時間を作りなさい。さもないと会社に行って直接呼び戻すわよ」

渕上婆さんの当然のような口調に、渕上迅は少し困惑した。

「今日は忙しいんだ。本当に無理だ」

「ダメよ。どんなに忙しくても夕食の時間くらいはあるでしょう。必ず帰ってきなさい」

そう言って、渕上迅に話す隙を与えず、電話を切った。

柊木玲文と渕上晏...

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