第73章

柊木玲文の瞳孔が一瞬縮まり、急いで言った。「どのバーにいるの?」

「明知通りの近くの、前に一緒に行ったことがあるところだよ。来る?」

「うん」

電話を切ると、柊木玲文は急いで服を着替えて出かける準備をした。

車を始動させるとき、彼女はまた躊躇した。

今行ってもただ対立を激化させるだけだし、渕上迅が自分のために渕上晏仁に手を出したのかどうかも確信が持てない。もし他の理由であれば、行くのは自意識過剰すぎる。

あの日、屋敷で不愉快に別れた後、渕上迅が自分のために何かをするとは思えなかった。

そう考えると、柊木玲文は冷静になり、行かないことに決めた。

部屋...

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