第80章

柊木玲文は苦笑いを浮かべた。今夜はもう帰れそうにない。

「いいえ、パーティーの場所は美織の家の近くだから、今夜は彼女のところに泊まる」

電話の向こうは静かになり、しばらくしてから渕上晏仁の低い声が聞こえた。「玲文、昨夜のことをまだ怒っているのか?」

「いいえ、ただ美織と久しぶりにゆっくり話したいだけ。だから今夜は彼女のところに泊まるつもり」

再び長い沈黙が続き、渕上晏仁が口を開いた。「わかった。何かあったら電話してくれ」

「うん、わかった」

電話を切ると、柊木玲文の携帯にバッテリー残量が20%しかないという通知が表示された。充電が必要だ。

柊木玲文は眉をひそめ、昨夜帰ってからお風...

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