第88章

本来ならまだ昏睡しているはずの柊木玲文が、隣にあったフラスコを掴んで井上裕樹の頭に思いっきり叩きつけた。フラスコの鋭い破片が彼の額を切り裂き、瞬く間に血が溢れ出した。

その一瞬の隙をついて、柊木玲文は彼を突き飛ばし、よろめきながら外へ逃げ出した。

しかし、彼女の全ての力は先ほど井上裕樹を叩いた一撃に使い果たされており、全身が力を失い、歩くのもままならない状態だった。ドアにたどり着く前に、井上裕樹に髪を掴まれてしまった。

「このクソ女、よくも俺を叩きやがったな!」

井上裕樹は片手で彼女を掴み、もう片方の手で彼女の顔を何度も叩いた。

彼の額の傷は処置されておらず、血が眉を伝って流れ落ち、...

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