第191章

高橋隆一が山本健一からの電話を受けた時、ちょうど外出の準備をしていた。この数日間、彼は多くの仕事を滞らせていた。

「高橋社長、お手数ですが来ていただけませんか。美咲ちゃんの状態があまり良くないんです」

高橋隆一は服を手に取ったまま動きを止め、無意識に居間で花を弄んでいる渡辺美代の方を見た。

「どうしたんだ?」

「美咲ちゃんがまた自殺したいの。さっき病院の屋上まで行って、足を一方は乗り出してしまって、あやうく命を落とすところでした。今は制御できていますが、早く来て見てやってください。いつこの母子と会えなくなるか分からない」

電話の向こうで山本健一は事態を極めて深刻に伝え、声も泣きそう...

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