第196章

高橋隆一は我に返り、前に出て山本健一を引き離した。山本健一はまだ口の中で、渡辺美代に山本美咲を許してやってほしい、この世で生きるチャンスを一度だけでも与えてほしい、姉として冷たすぎる、妹の命を無視するようなことはできないはずだと騒ぎ立てていた。

一言一句が彼女の罪悪感を利用するものだった。

山本美咲を守るため、彼はもう一人の娘を利用するという冷酷さを見せていた。

渡辺美代は山本健一が高橋隆一に引き離されて制御されている様子を見ながら、麻痺したように立ちすくんでいた。一瞬、数十年後に自分のお腹の子が高橋隆一にこのような扱いを受ける姿が目に浮かび、胸が締め付けられるような痛みを感じた。

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