第60章

浅井立夏の脳裏で花火が爆ぜた。彼女が彼を押しのけようと反応した瞬間、男は彼女の唇を強く噛んだ。

「ッ……」

浅井立夏は痛みに息を呑んだ。彼女が犯人を睨み上げると、薬の入った椀を手渡された「苦いな。椀を洗ってこい」

浅井立夏「……」

この人は鬼か?

浅井立夏は渋々椀を持ってキッチンへ向かった。数歩進んでから、さっき宮原裕也に無理やりキスされたことに気づき、振り返った。

男はタオルで髪を拭きながら、悠々と寝室へ入っていく。浅井立夏は呆れて言葉も出なかった。

キッチンに入り、シンクで椀を洗いながら、彼女は考え込んでしまった。さっきのは確かにキスだった。あの辛辣な言葉をよく吐く口なのに...

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