第18章 絶対に彼を愛さない

松見和也の陰鬱で驚愕した瞳の中、西尾美月の耳をつんざくような叫び声の中、二人は振り返ることなくその場を去った。

大塚玲子は篠崎沙耶香に急いで追いつき、焦りながら彼女の腕を引いた。彼女は篠崎沙耶香が今にも涙を流していると思っていた。

篠崎沙耶香のことをよく知っているからこそ、松見和也の前で反抗すればするほど、彼女が深く傷ついていることを理解していた。

彼女の強気な外見の下には、いつも脆くて敏感な心が隠されているのだ。

しかし、大塚玲子が驚いたのは、篠崎沙耶香が一滴の涙も流していないことだった。それどころか、彼女の表情は冷たく、まるで何も起こらなかったかのようだった。

「沙耶香ちゃん」...

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