第15章

まだ何も起こらないうちに、車が急ブレーキをかけた。坪田真耶は驚いて声を上げ、前に倒れ込みそうになったが、シートベルトに引き戻されてしまった。なんともみっともない姿だった。

高波直俊は顔色一つ変えずに言った。「着いたぞ」

坪田真耶が顔を上げると、車はすでに自宅の別荘の前に停まっていた。彼女は内心で苛立ちを覚えた。この道はどうしてこんなに短いのか?もう少し話す時間が欲しかったのに。

高波直俊がシートベルトを外そうとするのを見て、坪田真耶は急いで彼の手を掴んだ。細長い指が暗示的に手首をなぞった。

「直俊……今夜、両親は家にいないの……」

彼女の暗示を理解した高波直俊は、嫌悪感を抱いて手を...

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