第190章

三原由美は午後に医者の当直室で少し休憩し、斎藤拓海の仕事が終わるのを待って、二人で一緒に退勤した。肩を並べてエレベーターホールへと歩いていく。

高波直俊はずっと部屋の外の様子に注意を払っていた。

三原由美の姿がドア前を通り過ぎるのを見た瞬間、すぐに後を追おうとしたが、高波明に呼び止められた。「パパ、何をコソコソしてるの?」

高波直俊は足を止め、振り返って「シッ」と指を唇に当てた。

高波明は目をパチクリさせ、声を潜めた。「パパ、どこに行くの?」

高波直俊も声を低くした。「ちょっと用事があって出かけるんだ。お前はここで大人しくしてなさい。あとで戻ってきて一緒にいるから!」

そう言うと...

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