第26章

息が止まったような瞬間だった。しかし、危機的状況で医者としての本能が上回り、由美は深く息を吸い込むと、明を抱き起こして座らせた。専門的な手当てを施しながら、直俊に向かって指示を出した。

「ベッドサイドの引き出しに気管支拡張剤があるわ。急いで持ってきて。遅くなったら手遅れ」

直俊は詰問する暇もなく、階段を駆け上がって薬を取りに行った。由美は吸入器を明の口に当てながら、優しく声をかけた。

「大丈夫よ、お母さんがついているわ。さあ、深く息を吸って。頑張って」

明の顔は紫色に変わり、目を開けるのも困難な様子だったが、必死に由美の指示に従って呼吸を続けた。

直俊は傍らで焦りながら、久人が薬を...

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