第29章

朝食を済ませた三原由美は時計を見て、高波明の頭を撫でた。

「明、ママちょっと実家に戻らなきゃいけないの。何かあったらすぐにママに電話してね」

さっきまで機嫌よく笑っていた高波明は、途端に顔を曇らせ、三原由美の手を掴んだ。

「いやだ、ママ行かないで」

「でも」三原由美は苦笑いしながら、理由を説明しようとした。「ママはおじいちゃんと約束してたの。心配しないで、晩ご飯の時には帰ってくるから。明を置いていくつもりなんてないわ」

高波明は眉をひそめ、しばらく考え込んでから顔を上げ、決然と三原由美に言った。

「じゃあ、ママと一緒に行く」

「それは...」三原由美は困った表情を浮かべた。「マ...

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