第30章

しかし、高波直俊もその場にいて、今や毒を含んだような目つきで彼女を見つめていた。真耶は小刻みな足取りで直俊の側に寄り、さりげなく明に噛まれて血が出た腕の痕を見せながら、涙ぐんで説明した。

「直俊さん、ごめんなさい。全て私が悪いんです。さっき明くんに噛まれた時、本当に痛くて…反射的に蹴ってしまって…その時は頭が働いていなくて…もし冷静だったら、絶対にそんなことしなかったんです」

ソファーに横たわる明は目を閉じ、痛みで呻き始めた。直俊は心配そうに彼の額の汗を拭いながら、坪田真耶を見ることもなく答えた。

「明をちゃんと面倒見ると言ったのに、まさかこんな風に面倒を見るとは思わなかった」

その...

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