第62章

この瞬間、彼の頭の中には三原由美の傷のことしかなく、心を集中させて彼女の体の汗を丁寧に拭き取り、病衣に着替えさせた。

点滴をしている手の袖を通す時は、慎重に点滴ボトルを袖から通した。

着替えが終わると、乾いたタオルで彼女の濡れた髪を丁寧に拭いた。

その動作は優しく細やか、まるで彼女が繊細な陶磁器の人形のように、少しでも乱暴に扱えば壊れてしまうかのようだった。

全てを終えると、もう五時近くになっていた。

秋に入ったとはいえ、まだ日の出は早く、朝の光がベランダから少しずつ差し込み、窓ガラスを通して三原由美の顔に落ちていた。

高波直俊は疲れて脇に座り、黙って彼女を見つめていた。

点滴...

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