第90章

高波直俊の全身は傷だらけだった。致命的ではないものの、見た目は凄惨を極めていた。

高波久人は信じられない思いでいた。ボスがこれほどの怪我を負いながら、少しも痛みを感じていないなんて。半人ほどの高さの草むらに入っていくには、どれほどの信念があれば可能なのか想像もつかなかった。

高波直俊は傷の手当てをし、清潔な服に着替えると、すぐさま救急処置室へ駆けつけた。

三原由美はすでに観察病室へ移されていた。高波直俊も観察病室へ急ぎ、病床に静かに横たわる三原由美の姿を見た瞬間、張り詰めていた神経が急に緩み、思わず口元が緩んだ。かつてない満足感に包まれた。

「俺の妻の状態はどうですか?」彼は医者に尋...

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