第97章

田中和也からの命令を受け、引き返そうとした海上保安庁の船がまた戻ることになった。

高波直俊の鋭い目はOMMの貨物船から一瞬も離れず、その瞳の奥には何か計り知れない思いが宿っていた。

青木直樹が提案した。「三原智司が船上にいることが確認できたなら、すぐに人員を増やして捜索すべきだと思います。彼らが隠れているにせよ、事前に情報を得て逃げたにせよ、我々の計画が漏れたか、海上保安庁内に内通者がいることになります。じっと座って見ているよりも、直接行動したほうがいいでしょう」

田中和也は彼の意見に賛同した。「直樹の言うとおりだ。奴が三原智司を連れて隠れているということは、すでに情報が漏れている証拠...

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