第142章 二度と会わない

佐藤明里はこれが世界で最も素晴らしい音だと思った。彼女は藤原信一の手から証明書を奪い取り、テーブルに強く叩きつけた。

「する!」

その瞬間、藤原信一の凛とした姿は凍りついた。

すぐに、印鑑が押された赤い証明書が二人の手に渡された。

佐藤明里はそれを受け取り、きちんとバッグにしまった。

一方、藤原信一はなかなか受け取ろうとせず、鮮やかな赤色が彼の病的に青ざめた顔色をより一層際立たせていた。

初めて、こんなにもこの色を憎んだ。

佐藤明里はそれを受け取って直接彼の胸に押し込み、冷たく言った。「人の退勤時間を邪魔しないで」

薄い一冊が胸元に当たっただけなのに、心が焼かれるような感覚が...

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