第159章 自分惚れ

薄田年が彼女の視線の先を見て、訪問者を確認した。「場所を変えようか?」と尋ねた。

佐藤明里は頭を振った。「大丈夫」

彼女は一生彼から逃げ続けるわけにはいかない。

それに、ここは公共の場だ。藤原信一がこんな場所で無礼なことをするとは思えない。

そう自分に言い聞かせても、藤原信一が近づいてくるにつれて、彼女の心臓は激しく乱れ始めた。

特に彼のあの目だ。一瞬も瞬きせずに彼女を見つめる眼差しに、鳥肌が立った。

まるで条件反射のように、藤原信一が彼女のテーブルに辿り着いた瞬間、佐藤明里はぱっと立ち上がり、叫んだ。

「しつこいな!」

一瞬にして、レストラン全体が静まり返った。

佐藤明里...

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