第182章 この獣

鈴木念は何も言わず、ただ首を振った。

すぐに、平沢景行が薬を持って入ってきて、二人がまだ元の距離を保っているのを見ると、瞳が一瞬だけ揺らいだ。

彼は薬を星野海に渡しながら尋ねた。「先に点滴ですか、それとも外用薬から?」

星野海は薬を看護師に手渡して言った。「外用薬は持ち帰って塗るもので、点滴は今します」

平沢景行は眉を少し上げた。「星野先生が塗ってあげるんじゃないんですか?」

星野海は顔を上げて彼を一瞥し、淡々と言った。「違います。必要があれば看護師に手伝ってもらいます」

平沢景行は眉を挙げ、意味深な口調で言った。「私が直接彼女に塗ってあげますよ」

星野海は聞こえなかったかのよ...

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