第51章 あなたは心がありますか?

ドン——!

後ろから鈍い大きな音が響いた。

佐藤明里は躊躇いがちに振り返った。

男の大きな体が真っ直ぐに地面に横たわり、微動だにしない。

佐藤明里の心臓がドキリと鳴った。

自分の手を見つめ、こんなに力があるはずがないと思った。

この状況では、逃げ出すのが賢明だろう。

だが最終的に感情が理性に勝り、佐藤明里は足早に男の側へと向かった。

あの凛としたハンサムな顔は、今や病的なほど青白く、額には細かい汗が浮かんでいた。

彼女は軽く彼を揺すってみた。「藤原信一……藤原信一……」

男は全く反応を示さない。

佐藤明里はすっかり慌ててしまい、涙がぽろぽろと頬を伝った。手を伸ばして彼の...

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