第63章 心にまた一刺し

「佐藤明里」

平田延舟は満面の喜びを浮かべた。「来てくれたのか?早く、早く、こっちだ!」

それから彼は薄田年を一瞥し、傍らのアシスタントに目配せをした。

冗談じゃない。もし藤原信一が佐藤明里が他人のお見舞いに来たことを知ったら、この病院を解体しかないだろう。

今は佐藤明里が誰のために来たかなど関係ない。まず、藤原信一に会うだけだ。

彼は他の人たちを気にせず、佐藤明里の手を引いて階段を上がった。

後ろでは、薄田年がまだ続こうとしたが、アシスタントに遮られた。

「申し訳ありませんが、こちらでお待ちください」

……

エレベーターの中。

佐藤明里は心配そうに尋ねた。「藤原信一さん...

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