第79章 おばあさんが亡くなった

おばあさんが救急処置室に緊急搬送された。

佐藤明里は体が硬直し、どうしていいかわからない様子だった。

藤原和也はスーツを脱ぎ、明里の肩にかけながら彼女を見つめた。「歩ける?」

佐藤明里の小さな顔は透き通るほど青ざめ、今にも気を失いそうだったが、それでもベッドの端を掴み、強い意志で立ち上がった。

彼女の瞳は本来なら輝いているはずだが、今はその光が虚ろだった。

「ありがとう」佐藤明里は小さな声でお礼を言った。

おばあさんの尊厳を守ってくれたことへの感謝だった。

少し落ち着いてから、彼女はゆっくりと一歩一歩外へ向かった。

まるで一世紀もの時が過ぎたかのようだった。

白衣を着た医師...

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