第36話

「彼、それを覚えていたの？」

私の中では、ここへの訪問の記憶は曖昧だったけれど、トビアスが新しい親友を紹介するために家族のもとへ連れてきた日のことは、今でも覚えている。

あの嵐のような灰色の瞳と初めて出会った日を、どうして忘れることができるだろう？

あの控えめで恥ずかしがりやの少年は、見知らぬ人々の中で居心地が悪そうにしていた。でも、彼の視線が私と合った瞬間、すべてが変わった。私の歯を見せた笑顔に返してくれた彼の優しい微笑みは、それ以来、私の心に刻み込まれていた。

彼は優しく親指で私の頬を撫でた。「あのかわいいそばかすがほとんど見えなくなってしまったね」

「まだあるわ。ただメイクで隠...