第74話

トビアス視点

彼女は飛び出して行った。私たちを置いて、彼女だけが嗅ぎ取れる何かを追いかけて。ティオと私は、今起きたことに唖然としていた。彼女は私たち二人から血を吸った。今まで見たことのないことだ。吸血鬼は吸血鬼から血を吸わない。彼女は私たちから血を吸っただけでなく、その過程で私たちに印をつけた。彼女に印をつけられることは望まないわけではないが、こんな状況でつけられるとは思わなかった。

「それは彼女が単なる吸血鬼じゃないからだよ、トビアス。気づかなかったのか?彼女には何か深刻な問題がある。彼女の目を見なかったか?彼女を取り巻く闇を感じなかったか?」ティオが首を拭きながら尋ねた。

「...

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