第15話

「全部嘘だったの?」

そんなはずはない。何かおかしいはずだ。アドルフは亡き妻を失った後、再婚することはなかった。彼女は幼い頃、彼の偉大な愛の物語を聞いた記憶がある。そして自分もそんな不滅の愛を手に入れたいと願ったことを覚えている。

人々は今でも彼らのロマンスをおとぎ話のように語り継いでいた。ハンサムな若き王が訓練に向かう途中で若い貴族の女性と出会い、一目で恋に落ちたという。

確かに、おとぎ話の王は戦争の真っただ中にあり、帝都を離れる名誉ある義務を負っていたが、その貴族の女性は愛する人の帰りを忠実に待ち続けた。ローレルは彼女が危険を顧みず国境まで彼に会いに行った話を思い出した。彼らは国境で結...

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