アルファ・クイーン

私は何度目かのエレベーターの鏡で自分を見つめ、ベージュのトレンチコートがきちんと着られているか、その下に下着しか着ていないことが見えていないかを確認する。ドミニクのオフィスに、セクシーなランジェリーとトレンチコート、そして15センチヒールのパンプスだけで会いに行くなんて、今でも信じられない。でも、これは必要なことだと思う。数ヶ月前に彼が浮気したあと、私は自分自身に多くの疑問を抱くようになった。確かにしばらくの間、自分をないがしろにしていたのは事実だ。ドムが出世すればするほど、私はひとりで過ごす時間が増え、在宅勤務もそれを助長した。私は自分をもっと大切にし、ロマンチックなディナーで彼を驚かせようとしたけど、彼との間に本当の進展を感じることはできなかった。

エレベーターのドアが開き、私は顎を上げて歩き出す。さあ、頑張れ！と自分を励ます。真っ白な壁の廊下を横切ると、ドミニクの秘書マリッサのデスクを通り過ぎる。彼女は目を見開いて急に椅子から立ち上がった。

「ジェンキンス夫人、中に入ってはだめです」彼女は私の行く手を阻もうとするが、動きが遅すぎる。「少なくともあなたが来たことを彼に知らせさせて！」と彼女は叫ぶが、私はサプライズを台無しにはさせない。

オフィスのドアを開けると、私の世界は崩れ落ちた。顔の笑顔がゆっくりと消えていく。あなたは今まで、自分の脳が悪ふざけをしているのか、それとも本当に起きていることなのか分からない場面を経験したことがあるだろうか？まさに私が今経験していることだ。厳しい現実が私の顔を直撃する。ドムは背中を向けて、デスクに座っている会社のパートナーの一人、ヘレンとセックスしていた。彼女が最初に私に気づき、彼女の喘ぎ声が突然止まる。

「ドム！あなたの...奥さんよ」彼女が言うと、彼は動きを止める。

数秒経ってから、彼は頭を回すが、同僚からペニスを引き抜く労さえ取らない。

「イサ、出ていってくれない？ちょっと忙しいんだ」彼は冷静に言い、赤毛の女は笑い声を漏らす。

彼は青い目に軽蔑の色を浮かべて私を見る。彼らのすぐ横のデスクの上には、私が彼の初出勤日に贈った私の写真が置いてある。彼が一生懸命働いている間に私のことを考えてほしかった。そして今、彼はその売女と私の目の前でセックスしているだけでなく、屈辱が足りないとばかりに、彼女の前で賢そうに振る舞っている。これで私は気づいた、何をしても状況は良くならないということを。問題は私ではなく、彼なのだ。どうして私はこんなにも盲目で無邪気だったのだろう？

私は顎を引き締め、頭を高く上げたまま彼の目をまっすぐ見つめ、振り返ってドアを強く閉める。

「ごめんなさい...」遠くからマリッサの声が聞こえるが、彼女を見る気にもならない。彼女はあの卑劣漢が私の背後で何をしているか正確に知っていた。だから私を中に入れたくなかったのだ。他に誰がこれを知っていたのだろう？まるで私が冗談の的になっているような気分だ。私はエレベーターだけを見つめる。もう愚か者と思われるのはごめんだ。私はこの仮面舞踏会のような結婚より良いものに値する。絶えず私を軽蔑するこのクソ野郎より良いものに。

エレベーターのドアが開き、私はフレディのオフィスがある3階のボタンを押す。彼は離婚専門で、ドムと同じ会社で働いているけれど、私の両親の友人として私の利益を守ってくれると知っている。

彼の秘書のデスクに着くと、私はトレンチコートの前で腕を組み、突然自分の服装を意識する。

「こんにちは、フレディは空いてますか？もし空いていなければ、後で予約します...」

「空いてますよ、イザベラ。大丈夫ですか？」彼女は心配そうに尋ねる。

「いいえ」私は涙が流れないように戦いながら、頭を振って言う。もうあの野郎のためにこれ以上涙を流すのは拒否する。

彼女はオフィスのドアをノックしてから私を案内する。フレディは椅子から立ち上がり、いつもの青い三つ揃いのスーツを着て、同じ色の目を引き立てている。私が子供の頃に覚えている金髪は、今や灰色の髪に変わっていた。

「イザベラ...」

「離婚したいの。できるだけ早く」私は彼の言葉を遮る。「彼を私の人生から追い出したいだけ。お金もアパートも気にしない。ただ彼を私の人生から消したいの」私は腕をきつく自分に巻きつけながら言う。

「彼があなたを傷つけたの？もしそうなら...」彼はゆっくりと私に近づきながら言う。

「肉体的にはね」私は鼻筋をつまみながらため息をつく。「この結婚から抜け出したいの。もう無理...力がないの...」

「心配しないで、それがあなたの望みなら必要なことをするよ」彼は私を腕に抱き寄せながら言う。

「ありがとう、フレディ」私はすすり泣く。

「君のお父さんには、いつも君のそばにいると約束したんだ。その約束を守るつもりだよ」彼は私の頭頂にキスをする。「アレックスに君の荷物を家から取ってきてもらおうか？しばらくレベッカと私のところに泊まっていってもいいよ」

「ありがとう、でも迷惑をかけたくないわ。アレックスのところに...」

「やめなさい、君は私たちにとって持てなかった娘のような存在だよ。アレックスはすでに二人のルームメイトと住んでいるし、彼は気にしないだろうけど、今は君に少し平和が必要だと思う」

「ありがとう。全てに感謝するわ」

フレディとレベッカの家に着くころには、アレックスから何を荷造りすればいいかと尋ねるメッセージがすでに届いていた。それでも、頼れる人たちが人生にいることに幸運を感じる。ドミニクとの関係に終止符を打ち、軽蔑、嘘、裏切りから抜け出すのが待ち遠しい。